Special : Interview エンディングテーマ Taja

 『MS IGLOO2 重力戦線』のエンディングテーマを担当するアーティストへの連続インタビュー。最後を飾るのは、第3話『オデッサ、鉄の嵐!』のエンディング曲を担当したTajaのお二人!  『MS IGLOO』前2作の主題歌を担当し、IGLOO=Tajaという印象が強い中で、満を持しての登場となった今回の楽曲は、今までとは異なるイメージで仕上げられていた。より、Tajaらしい楽曲となった『NO LIMITS∞』(ノーリミッツ)に込められた思いとは? すでに息のぴったりと合った、今西監督とのやりとりの秘密とは?

 今回はTajaのお二人、菜穂さんと佑次さんのお二人に話を伺った。

Profile

Taja

Rockを基調にしながらも、様々なジャンルの音楽を取り入れたメッセージ性の強い楽曲。心のひだを揺さぶるヴォーカル・菜穂の声と言葉。
打ち込みサウンドと生楽器を融合させ、温かく、どこまでも広がりゆく音楽を生み出す、狩野佑次のアレンジ。 二つの個性と、それを支えてくれる様々なミュージシャンとのコラボレーションにより展開される唯一無二なTaja World。
Taja(タージャ)とは、中国語で「みんな〜!」(大家)という呼びかけの言葉。 「音楽を通じて出会えた人々が。家族のように繋がっていければ、幸せな世界になるはず」という願いがこのユニット名に込められている。
『MS IGLOO 1年戦争秘録』、『MS IGLOO 黙示録0079』の主題歌、『機動戦士ガンダム00』の挿入歌なども担当。

オフィシャルホームページ
http://taja.kir.jp/

 

――まずは「『MS IGLOO』にお帰りなさい」という感じですね。

菜穂:そう言っていただけて嬉しいですね。昨年、『ガンダム00』の挿入歌を担当した後に、とある地方のバーでライブをやらせていただいたんですが、そこはガンダム好きな方がいるお店で、スクリーンでは『MS IGLOO』が流れていて、お客さんが店中で「♪消えゆく星の〜」って前作の曲を合唱しているようなお店だったんですね(笑)。紹介のされ方も「IGLOO歌手のTajaさんです」と言われて(笑)。MCで「今日は『ガンダム00』のイベント後で来たんですけど」って言ったら、「『ガンダム00』もやっていたんですか?」というような反応が返ってきまして。IGLOO=Tajaとリンクしていただいているファンがたくさんいらっしゃることは、すごく嬉しいなと思いました。

――今回は、どのようなオーダーで曲作りをされたんですか?

菜穂:私は、歌詞とメロディを担当したんですが、今西監督から「また、ぜひ歌ってください」と直接メールをいただきまして、すごく嬉しいなと思いまして。そのメッセージには、短く今作のイメージが書いてあったんですけど、これはあくまでメモレベルで「この後に、シナリオとかが来るんだろうな〜」って待っていたんですよ。でも、その後まったく連絡が来なくて。しばらくしてから、プロデューサーから「曲はできましたか?」って連絡があって、「脚本とかないんですか?」って訊いたら「読まないで作ってください」って言われまして(笑)。
 前作の2曲は、スクリプトとシナリオがあって、それを読んでドラマ的なところに触発されて書けたんですけど、今回はそれが無くて、メモだけで書いてくれと(笑)。そのメモには今回は死神がテーマで、その死神の視点で歌って欲しいという事や、いわゆる命を吸い取るような役ではなく、戦いに憑かれた兵士をいざない、魂をさらってゆくような役だからということが書いてあってそんなメモ書きをヒントに仮の詞を作ってメロディに載せたんですね。たぶん曲を聴いた後にいろんな要望が出てくると思っていたので、まずは叩き台という感じで。
 そんな仮の詞が入った形でとりあえず曲を提出したら、監督に「歌詞もなにも変えずに、これで行ってください」って言われたんですよ。「これに2番の詞も加えて完成させて欲しい」とも言われたんですが、結局シナリオは来なくって(笑)。だから、これはきっと過去の2作もやっているので、今回もTajaらしくやっていいよって言うメッセージなんだろうなと思いました。

――メモにはどの程度書かれていたんですか?

菜穂:地上の話であることに加えて、「連邦の話」と書かれていたんですが、そこでまず拒否反応があったんですよ。私はジオン側の人間なので(笑)。その落としどころが死神だということだったんですね。Tajaの音楽は、ひとりひとりが戦って、痛みも喜びも受け止めようよというメッセージが多いのですが、その世界で行ってもいいのかなって。だから、そのままやらせていただきましたね。

――作品イメージ的にはドンピシャでしたね。今西監督も「作品のイメージにピッタリだ」って言ってましたよ。

菜穂:今西監督がこのメモの中で言わんとすることを、二日くらいかけてすごく考えたんですよ。「何がしたいんだろう? 何を考えているんだろう?」って。そこで、自分たちのテーマでもある「殻を破って頑張っていこう」ということを、死神というテーマを使ったらどんな感じになるかを考えて書いてみました。この曲に監督が求めているのは、「自分の役目が終わって、この世から姿や形が無くなっても、その魂はまだまだ生き続けて人々に影響を与えていく」という思いだろうかと自問しながらこの詞は生まれたんです。

――今回の曲調は、前2作のバラード調とは違うものでしたが、それも与えられたキーワードから導きだしたものですか?

佑次:僕は、そういうことは全然考えないんです。「今回は地上が舞台」という話を聞いた段階で、物語やキャラクターについてはまったく考えないで、翌日にすぐに作りはじめて、2時間後には完成していました。長い時間をかけて作っていると、オーダーをしてきた相手のことを考えてしまって、そちらに引っ張られてしまうので。だから、「地上」っていうインスピレーションだけで作りました。だから、リズムが完成した段階で「出来たな」って思いましたね。

菜穂:前2作は舞台が宇宙で、星空をバックに曲がかかることが多かったんですが、今回は監督のメモに「砂煙の中で」というものもあったので。「死神」という言葉から浮かんだのは、広がっていくイメージではなくて、彼(佑次)が作った音もそういうものだったので、ピッタリとはまっていった感じはします。でも、第1話のエンディングを担当した横田さんや、第2話の柿島さんの曲は、フワ〜っと広がっていくイメージで作られているので、逆に「私たちの曲はこんなに砂煙が上がっているイメージですけど大丈夫なのかな?」ってレコーディングの最中に思ったくらいで(笑)。「監督は、本当にいいって言ったんですか?」って思わずプロデューサーに訊いちゃいましたよ。

――とは言いながら、完成したばかりの第3話の映像を観たら、今西監督は今回の曲を劇中で使いまくっていましたよね。

佑次:オープニングから使われてましたよね。エンディングだって聞いていたのに(笑)。曲がかかり過ぎだろうって。

菜穂:今回仕事をしていて、「これってバンドっぽいやり方だなと」と思ったんですよ。バンドの時は、詳しい説明をしないで「この人だったら、こうしてくれるだろうな」って相手に投げるじゃないですか。だから今西監督は私たちをバンドメンバーのように「こう投げたら、こんなふうに返してくれるんじゃないか?」と思っているのかなって。モノ作りの人というのは、すごくパーソナルな思いから、何かを作っていくじゃないですか。私たちもそういうところを大事にしていて、もしかしたらそうしたパーソナルな部分で響き合ってくださっているのかなって、ちょっと嬉しかったりしましたね。『IGLOO』のシリーズは、今西監督が世界観をとても大切にしていて、それを大事にメッセージとして伝えようとしている作品なんだと感じるので、そんなに迷いはなかったですね。逆に、「そんなところにも共感して使っていただいているんだろうな」という喜びも感じました。

――オープニングの重力下での戦闘にはすごく合っていましたよね。

菜穂:もしかしたら、スクリプトをいただいて曲を作っていたら、余計に意識しちゃって、オープニングの戦闘で使われることはない曲が生まれていたかもしれないですからね。

佑次:音楽は全体の完成像を想定して作るので、曲を切って使うことはあまり意識しないんですよね。でも、劇中やエンディングで使われるときは編集されてしまうことも多いので、今回はどこで切られてもいいように盛り上がりを随所に入れた構成にしたんです。自分で「ここからここを切ったらいいかな」っていうところは、いつも以上に意識しているので映像の填め所は多いですよね。それから、今回は地上戦ということで、重力を感じさせる低音を効かせてビートをすごく上げつつ、機械音みたいな部分も意識して強調したりということはしています。

――今回の『NO LIMITS∞』というタイトルもちょっと意味深ですよね。

菜穂:地上のイメージはサウンドに任せたとして、言葉の意味としては魂的な部分を持ちあげたかったですね。魂に形があるとか、ないとかをテーマに置いたので、有限、無限と言う言葉がでてくるのかな。『NO LIMITS』の後に∞を付けたのは思いつきなんですけど、∞だとTajaが売れるかな、無限大にこのCDが売れて欲しいなという願いを込めて(笑)。
 『NO LIMITS』という言葉は、いろんな偶然が重なって出てきた言葉なんです。去年の年末頃に初めてハワイに行きまして、現地の自然や環境に触れることで、自分で限界を決めずにもっとやってみようよという気持ちを持ったし、Tajaももっとやってみよう、やれるんじゃないのという思いも持てたんですね。 
 そして、たまたまなんですが、カフナというハワイのお坊さんのような方の教えがあることを知って、それに関係する本を読んだりして過ごして帰ってきて。その本の中に「KALA」という言葉を見つけたんです。その言葉には「There is a No Limits」という意味があって、「あなたの限界は神様がきめるものだから、あなた自身が限界を決めずに、もっと自分を見限らずにやりなさい」という教えがあって。その時は、まだ曲名も決まっていなかったし、2番の詞も書いていなかったんですが、「NO LIMITS」という言葉が浮かんでいたので「これだ!」と思って。その後に、たまたまこの赤い髪飾りを友達のアクセサリー屋さんで見つけたんですけど、ハワイ語辞典をみて「KALA」って言葉の意味に、「赤」と「鳥」、そして「歌う」って意味があったんですよ。その3つと「あなたは自分を限ってはいけない」という意味もあって、それで、すぐにその髪飾りを買いました。今年の『Gフェスティバル2009』なんかの大きいステージでは、これを着けて歌わせてもらうからと言って。そんないろんな偶然がたくさん重なったんですけど、結果的にとてもいいタイトルになりました。

 

――『重力戦線』という作品を見られた感想はいかがでしたか?

菜穂:前作とはまったく作風が違って、リアリティのある戦争物の作品ですよね。普通のガンダムじゃないですよね。一人一人でてくる主人公も違うし、ただひとつ嫌いなのが司令官のコレマッタ。自分は現場に行かないくせに偉そうだし。3巻目の冒頭に出てきたときは「まだ生きてるの?」って思いましたよ。あれにはだんだんムカついてきて(笑)。

――自分たちの曲が流れるという点も含めて、やっぱり第3話が印象的ですか?

菜穂:私は、第1話もすごく好きです。果敢に立ち向かう感じとか。あんなふうに、もし本当にザクと戦うことになったら嫌ですよね。無理ですよ(笑)。そういうのが実感できましたね。2話も印象的だったのは、ザクに戦車ごと蹴られて、クシャって踏まれるシーンですかね。目の前にザクが何体も並んで出てきて、こっちが戦車だったら、普通は向かって行かないですよ。絶対に勝つのは無理だから。ザクって怖いんだなって、改めて思いましたね。それで、3話でやっとジムが出てきても、なんか情けない感じで(笑)。一瞬、ドムが出ますよね。またあれにもビックリして。

佑次:僕はCGがすごいなって思いましたね。前作を観たときにもすごいと思ったんですけど、作っている人が進歩しているのか、表現力がすごいですよね。あまりに格好良かったので、中に出てくるメカをそのままプラモデルとかで欲しいと思いますからね。このガンタンクはメチャクチャ欲しいです。走っていない通常時の姿がカッコイイので、あれが欲しいですね。

――そう言えば、前回のインタビューの際に「ヅダのプラモデルが欲しい!」って言っていましたが、発売されましたよね。

菜穂:手に入れて、作ってもらいました(笑)。ライブの最中にファンの方に作ってもらったという(笑)。家に飾ってありますよ。私は作れないので。

――では最後に楽しみにしているファンにひとことお願いします。

 

菜穂:お待たせしました、Tajaが帰ってきましたよ!『IGLOO』と言えばTajaということで(笑)。カップリングの曲もエンディングの続きのような曲になっていますので、2曲続けて楽しんで聴いていただきたいと思います!

佑次:今まで以上に映像と音楽が見事にマッチングしているので、感動も一際大きいと思います。カップリング曲もぜひ聴いてください。あと、映像が編集できる人はカップリング曲に『重力戦線』の映像を乗せて個人でも楽しんでみて欲しいですね(笑)。

――『MS IGLOO2 重力戦線』は3話で完結していますが、次回作の『IGLOO』があれば、また参加してみたいですか?

菜穂:私たちの歌を使っていただけるかどうかは、今西監督にお任せします!(笑)。

佑次:いつでも準備は出来てますので(笑)。

 

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