Special : Interview エンディングテーマ 横田はるな氏

 『MS IGLOO2 重力戦線』のエンディング曲は、各話で異なるアーティストが担当。各エンディング曲アーティストの方々は、どのようにイメージを膨らませて楽曲が誕生したのかを聞いてみた。

 第1回目は、第1話「あの死神を撃て!」のエンディング曲『Mr. Lonely Heart』を手掛けた横田はるなさんが登場。物語のキーパーソンである“死神”の心理に見事にオーバーラップした、シックなメロディの曲はどんな発想から生まれたのか? 楽曲への、そしてガンダムという作品に対する思いを語ってもらいましょう。

Profile

横田はるな

福井県出身。地元福井を拠点に、地元密着型で活動するシンガーソングライター。現在、FM福井のラジオ番組『ECO(イイコ)〜ちょっとイイコトはじめる』(毎週金曜11:30〜13:00)にレギュラー出演中。自身で作詞作曲をつとめたミニアルバム「小さな街」、「サヨナラデイズ」が発売中。また、他のアーティストへの楽曲提供なども手掛けている。ライブ活動や新曲の情報はオフィシャルホームページでチェック。

オフィシャルホームページ
http://haruna13.exblog.jp/
http://yokotaharuna.fc.yahoo.co.jp

 

――横田さんは、普段どんな活動をしていますか?

横田:私は福井県に住んでいるので、地元でのライブのほかに、ラジオのパーソナリティ、CM曲の作曲など福井を拠点に活動しています。東京にライブやレコーディングをしに来る以外は、基本的には福井で活動している感じですね。他のアーティストの方々に楽曲提供もさせて頂いているので、福井と東京を行ったり来たりで活動しています。

――なぜ福井を拠点にしようと思ったのですか?

横田:大学入学と同時に地元を離れ、東京に住んでいたことがあるんですが、いろいろな事情から福井に戻ってきたんです。でもやっぱり音楽がやりたいと思ったとき、もう一度東京に住むのは無理かなぁと。「だったら地元を巻き込んじゃえ!」と思ったからですね。地方で音楽活動をするとなると不便かなぁとも心配したのですが、作った曲をパソコンに録音してデータで送ると、その曲をアレンジしたものがデータで戻ってくるので、本番レコーディングやライブではない限り、福井で活動していても問題ないんですよ。東京では、現在2ヶ月に1回ぐらいのゆったりペースでライブをしていますね。

――普段はどんな感じの音楽を演奏しているんですか?

横田:ジャンルはポップスで、ピアノ弾き語りの演奏がメインですね。ライブでは、それをフルバンドで演奏したり、アレンジしたりします。でも、基本はピアノと歌。今回歌わせていただいた『Mr. Lonely Heart』もそうですが、ピアノの音を生かした曲が大好きです。

――『ガンダム』という作品自体はご存じだと思うのですが、横田さんはどれくらい『ガンダム』に関係する知識はあったんですか?

横田:最初の『機動戦士ガンダム』は、ビデオで観たことがあります!

――わざわざビデオで観るなんて、すごいですね!

横田:世の中で『ガンダム』という作品の存在が大きいですよね。アニメだけではなく、ゲームやおもちゃも多いし。ということは、絶対にそれだけ人の心を掴んでいる作品なんだろうなと思ったんです。私もクリエイターの一人として、そういう人の心を掴む作品に触れておかなきゃと思ったんですね。学ぶ意味も込めて「いったいガンダムにはどういう魅力があるんだろう?」と。

――実際に映像を観た感想は?

横田:シャアがかっこいい!!(笑) 最初は、私はアニメをあまり観ないので、理解できないんじゃないかと心配していたのですが、物語にぐっと引き込まれちゃって、最後には号泣しちゃいました。感動しますよ! しかも『ガンダム』って、私が観た最初の作品だけじゃなくて、その後どんどん進化していますよね。その時々の視聴者に受けるようにして作っているなんて、すごいなぁとびっくりしました。友達にもガンダム好きがいっぱいいるので、ガンダム話の仲間にも入れるようになりました(笑)。

――『MS IGLOO2 重力戦線』というガンダム関連のOVA作品の主題歌の依頼を受けた時に、音楽プロデューサーさんからは、どのようなオーダーがあったんですか?

横田:作品の内容について、かなり的確な意見を頂きましたね。ファーストガンダムよりも、もっとリアルな戦争映画で、悲しいことがたくさん起きる。でも、そこに歌があることで救いがある、というイメージを聞きました。劇中には“死神”と呼ばれる女性が登場するので、彼女の視点からの歌を作って欲しいと。曲のテーマは「鎮魂歌(レクイエム)」とも言われていたので、オーダーに則してまとめた感じですね。

――曲作りの時には、どんな風にイメージをふくらませましたか?

横田:普段手掛ける楽曲は、しっとりめの曲が多かったのですが、どれも女性の日常的な視点の詞ばかりだったんです。今回のように、普段とは違ったイメージで曲を作るというのは初挑戦なので、前回の作品(『MS IGLOO 1年戦争秘録』、『MS IGLOO 黙示録0079』の6話分)を全部観て、そこからイメージを膨らませました。

――6本全部観たんですか?

横田:観ました〜! 観ないと全然わからなくて(笑)。ちゃんと自分で観て取り入れないと、と思って観たら、全巻号泣しちゃって。ホント、私すぐ泣いちゃうんですよ。話の冒頭は、すごく男っぽいんですが、観ていくうちに引き込まれてしまって。ガンダムをよく知らない私が観ても、モビルスーツやメカのかっこよさがわかるし、主人公や他のキャラクターと自分自身の人生が重なる部分があるので、一人で泣きながら観ていました。

――前の6本の中で、一番好きなエピソードは?

横田:女性士官が弟と戦場で再会するエピソード(『黙示録0079』第2話)が、一番泣きました。なんでこんなことに……と思って。どの話も素晴らしいんですが、私自身に弟がいることもあって、それが一番印象に残っています。やっぱり女性の視点で観ちゃうんですよね。映像を観ていると母性が、がーっと発揮されちゃいます。

――曲作りの参考になりましたか?

横田:それはもう! 映像も、自分が体感したことのない世界だったので、大きなヒントになりましたね。

――詞の中に「宇宙(そら)」という言葉はガンダムの世界観を意識したものだと思いますが、他にキーワードとしてピンときたものはありますか?

横田:私の曲は地上戦を描いた作品で使うと聞いていたのですが、ガンダム=宇宙というイメージがあったので、あえて「宇宙(そら)」を使った方がいいなとか。他には、普段の曲では絶対使わない「魂」という言葉とかですね。その他にも「蒼い」という言葉も使っていて、これはプロデューサーさんとの話の中で入れて欲しいと言われたものです。全体的に、死神と呼ばれる女性の視点ということを意識して、言葉遣いも、ちょっとだけ上から目線にしてあるんですよ。女性が、戦っている男性に対して言葉をかけるイメージですね。この作品のような戦争という状況ではなくても、男の人って仕事や社会で戦っている印象が強いので、そのイメージを膨らませて作りました。

――孤独に戦っている男が、最後を遂げた後にかかる曲として、イメージがぴったりですね。エンディング映像で死神とオーバーラップしていくのが、すごくグッときました。

横田:自分でも出来上がった映像を観て、本当にびっくりしました。まさか、この曲がここまでピタッとはまっているとは思ってもいなかったので。こんなにもイメージとうまく重なるのはすごいうれしいですね。普段自分が作っていた曲では、あそこまではまらないし、本当にうまくフィットしてラストは「ああ〜」と口をあんぐりして観てしまいました(笑)。本当に良かった〜と思っています。

――作曲は楽しかったですか?

横田:実はオーダーを受けて曲を作るというのが初挑戦だったので、すっごく新鮮でした! でも、作っている最中は、「イメージと違う!」ってすごい注意されて変えていかなければいけなくなるかもと、内心ではビクビクしていたんですが(笑)、歌ってみたらあっさりOKが出たので、ホッとしました。
 きっと、ビデオで観たファーストガンダムが自分の中に根付いていたおかげで、すきっと曲が出てきたんでしょうね。観ていてよかったです! その後、CMソングとかイメージソングなどでもオーダーを受けて曲を書かせて頂くことが増えたんですが、この時の経験が大きく役に立ちました。

――それまでの作曲方法と、そんなに違う感じだったんですか?

横田:以前は自分が書きたいものを出していくだけでよかったんですが、オーダーは頂いたものにどう自分を乗せていくかという方法だったので、アプローチからして全然違いましたね。ただ、オーダーをもらって作曲したいとはずっと思っていました。だから滅多にないチャンスをもらって、貴重な体験をさせて頂いて、本当に良かったです。

――以前から横田さんのファンの方と、ガンダムファンでは、ファン層にかなりの違いがあると思うのですが、その違いを意識して作曲しましたか?

横田:実は、私がガンダムの歌を作ることになったら、一緒に仕事をさせて頂いている30代後半から40代前半の男性の方々が、すごく喜んでくれたんですよ。今までは隠れていたけど、ホントはガンダム好きだったと、次々と名乗り出ちゃって(笑)。きっとこういう方々が一番ドンピシャなんだろうなぁと思ったので、ファン層のイメージには苦労しませんでした。ガンダム話もたくさん聞けたのも参考になりました。私の普段のファン層は20代半ばの女性や、30代前半の男性といった、同世代・友達感覚の方が多かったので、ガンダムファンは一世代上ぐらいでしょうか。でもいつもと違うファンの方が増えて、うれしいです。

――ライブにも来る人が変わってくるかもしれないですね

横田:そうなったら、うれしいですね。年代が上の男性の心理に対して、私がわかることなんて少ないと思うんですが、今、世の中が不景気になって、一番つらい目にあっているのが、30代後半から40代の方々じゃないですか。その人達に向けての曲を作ろうという発想が自分の中から生まれてきたので、おもしろいです。今までとは違う視点から曲作りをしたい。そして、きっとできるんだろうという自信もちょっぴり生まれました。それは、今回の曲作りで、自分の視点を変えられるということを学んだからなんです。私は音楽を始めて間もないんですが、本当に貴重な、良い経験をさせていただいたと思います。またなにかあったら、いつでもお呼びください(笑)。もっとガンダムをやりたいです!

――そうした経験を踏まえて、『Mr. Lonely Heart』がエンディングに収録されている第1話を観てどうでしたか?

横田:いや〜、もう号泣です。というか、ガンダムでは本当にいつも泣いちゃうんですが(笑)。30分という短さで、ここまで架空の主人公に感情移入しちゃえる作品って、世の中にそうそうないんじゃないでしょうか。びっくりしました。制作しているスタッフは本当にすごいです。観終わった後、やっぱり、曲を担当させて頂いて光栄だなと思いましたね。

――女の子でも泣けます?

横田:絶対に泣けます!(笑)かっこいいんですよね〜。あと、男性はこういう所が好きなんだろうなぁと、ちょっぴりツボがわかるようになりました。メカの細かい所まで良く見えますよね。私でもこれがすごいなとわかったんで、男性はたまらないかも。前のシリーズは戦闘が派手でしたが、今回はちょっぴり地味ですよね。でもそれが逆にリアル。ヒュー、ドカン!という爆発だらけの戦闘よりも、人となりというか、芝居一本でも動き方一つでもすごく出ているなぁと思って。どれだけの時間と手間がかかっているのかなぁと、感心することだらけです。イロイロすごいです。この後に続くストーリーも、すごく楽しみです。続きも絶対観ます!

――今後の活動予定を教えてください。

横田:東京では3月20日に秋葉原でミニライブを、あとソロライブも4月15日に予定されています。坂本真綾さんや中島美嘉さんへ楽曲提供したアルバムも、現在発売中です。また、3月発売の他のアーティストの方にも、新たに楽曲提供しています。オリジナル曲は随時作っているのですが、まだアルバムを出す予定はないですが、ライブでは随時新曲を発表していますので、ぜひ聴きにきてください! 

――『Mr.Lonely Heart』は、ライブで歌いますか?

横田:福井のファンの方からも「聴きたいです」とリクエストを頂いているんですが、実はまだ1回も歌っていないんです。演奏スタイルが、ピアノの弾き語りなので、アレンジに悩み中です……。まとまれば、ぜひ歌ってみたいですね。

――では最後にファンの方にひとこと

横田:この曲は、本当にガンダムのストーリーに沿って作らせていただいたんですが、今、世の中で戦っているみなさん、リストラなどつらいことがあると思うんですが、そういう方の癒しというか、救いの曲になったらいいなと思っています。ぜひ、いろんな世代の戦っているみなさんに聴いていただけたらいいなと思っています。この曲を聴いて、元気を出してくださいね

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